PC-Webzine "from DIS" (2019年)
2019年02月号
民間主導か自治体主導かマネタイズが最大の課題
モデレーターを務めたアーキテクトグランドデザイン
ファウンダー&チーフアーキテクトおよび益田サイバーシティ創造協議会 専務理事を務める豊崎禎久氏。
モデレーターを務めた豊崎氏も地域のスマートシティプロジェクトに携わっている。同氏が携わっているのは人口5万人の島根県益田市でのプロジェクトだ。
益田市での取り組みの意義について豊崎氏は「人口5万人規模の地域でありながら大都市並みの町の機能を有している。また中山間地域であり四季があり、過去の自然災害事例など日本の多くの地域に共通する環境がそろっている。すでに超高齢化が進んでいるなど多くの地域課題を抱えている。2030年の日本の未来が益田市にある。益田市での取り組みは未来の日本の課題解決に役立てることができる」と強調した。
益田サイバースマートシティ創造協議会の役割は同協議会が開発・検証、提唱するスマートシティ対応IoTプラットフォームのインターフェース準拠製品を普及させることで地方創生の進展に貢献することだ。
この取り組みは国内にとどまらずアジアやアフリカなどの新興国にも展開することで、都市連携の新しいビジネスモデルを民間主導で共築することも目指している。
益田市でのプロジェクトは民間主導で進められており、自治体へ投資している形となる。その運営母体は当初、任意団体である「IoT益田同盟」であったが2018年より益田市と共築した一般社団法人益田サイバースマートシティ創造協議会へと移行した。
豊崎氏は「スマートシティの促進にはビジネス化が重要な要素となるため民間主導が有効だが、公的組織との連携も必要だ」と一般社団法人化の理由を説明した。
これに対して自治体と共同でプロジェクトを進めているシスコシステムズの三村氏は「主導が自治体の場合は議会の承認などの課題が生じる」と指摘した。
高松市の廣瀬氏は「自治体主導の場合、取り組みの方向が決まれば持続できる利点がある」と説明し、「しかし協議会に民間企業や大学を取り込む方法や、勉強会やワーキンググループ、企画などの管理に苦労するなど課題も多い」と付け加えた。
また予算の確保やマネタイズに関する課題についても活発な意見交換が行われた。シスコシステムズの三村氏は「当社の取り組みでは政府や自治体から予算が得られず、続けるには広告モデルなど収益源の確保が必要だ」と訴えた。
福岡市の的野氏は「利用者を増やすことでマネタイズにつなげられる。しかしドローンや自動運転の可能性を理解している人でも、自身が関わるとなると尻込みするのが実情だ」と難しさを語った。
最後に豊崎氏は「国内でさまざまなたくさんのスマートシティへの取り組みが進められているが、日本独自のスマートシティを目指すべきだ」と締めくくった。
仮想通貨だけではないブロックチェーンの用途ビジネスや地域創生に広く応用できる
市場規模は自動車産業に匹敵地域通貨への活用事例などを紹介
ダイワボウ情報システム西日本営業本部
営業推進グループ(中四国) 森下えみ氏
ダイワボウ情報システム 西日本営業本部 営業推進グループ(中四国) 森下えみ氏は自身の体験を交えながら仮想通貨と、それに利用されているテクノロジーであるブロックチェーンについて分かりやすく講演した。
ブロックチェーンと聞くと仮想通貨を連想するが、ブロックチェーンはさまざまな用途に活用することができるテクノロジーであり、ビジネスの可能性があると強調した。
仮想通貨は金融業界で進められているITと金融を融合させる「FinTech」の進展の中で誕生した。
物理通貨を持ち歩く必要がなく、スマートフォンなどのデバイスで利用できるという利便性が挙げられる。
国や地域で異なる為替レートがなくなり世界共通の価値で利用できるため、モノの売買やサービスの利用がより便利になるといったメリットもある。もちろんすでに報道されている通り、仮想通貨にはリスクがあることも明確に説明した。
仮想通貨に利用されているブロックチェーンと呼ばれる分散型台帳技術は利用者が保有する価値の改ざんやなりすまし、重複を防ぐテクノロジーだ。
この仕組みで利用者の正当性が証明でき、サービスを利用したり商品や情報を受け取ったりするなどビジネスや地域創生に活用できる。
森下氏は岐阜県高山市の飛騨信用組合が取り組むブロックチェーンを利用した電子地域通貨である「さるぼぼコイン」を紹介した。また食品や各種製品のトレーサビリティや、民泊の運営の自動化などにもブロックチェーンが活用できると紹介した。
最後に森下氏は「経済産業省はブロックチェーンの影響を受ける市場は67兆円で、これは国内の自動車産業に匹敵する規模だと発表している」と今後のビジネスの可能性を強調した。