PC-Webzine "from DIS" (2025年)
2025年07月号
人口減少による労働力不足が深刻化している。高品質な行政サービスを維持するために、地方自治体においてもデジタルトランスフォーメーション(DX)による業務効率化が不可欠だ。デジタル庁ではDX の取り組みの一環として、申請書を書かずに、複数の手続きを一つの窓口でまとめて受付可能にすることで、職員の負担軽減と住民サービス向上につながる「書かないワンストップ窓口」を推進している。こうした取り組みを支援するサービスとして、北見コンピューター・ビジネスでは「窓口業務支援システム らくまど」を提供している。
既存システムのデータを活用
北見コンピューター・ビジネスは、北海道北見市を中心にクラウドサービスを提供している企業だ。そうした事業を展開している同社は、北見市役所と共同で住民サービスの向上と窓口業務の効率化を支援するシステム「窓口業務支援システム らくまど」(以下、らくまど)を開発し、全国各地の自治体に向けて提供している。
らくまどの共同開発の背景について、同社取締役 DX推進部長 伊藤大輔氏は以下のように語る。「自治体の窓口では、来庁者が混雑する記載台で多様な様式の申請書から必要なものを選び、記入しなければなりません。しかし申請書の書き方が分からず、職員に書き方を確認しながら何度も同じ情報を手書きで記入することに不満を感じている方が多くいます。一方で職員は、専門知識と対応力が求められる中、手書きによる記入ミスや補正対応などの業務負担の増加に悩まされています。こうした自治体の窓口における課題を解決するために、『書かない・待たない・回らない』をコンセプトにらくまどを開発しました」
らくまどは既存の基幹系業務システムに追加導入可能なシステムだ。既存の基幹系業務システムのデータを活用した三つの機能によって、窓口業務の効率化を実現する。一つ目が「申請書作成支援」機能だ。基幹系業務システムが保有するデータを基に、氏名・住所・生年月日などを印字した精度の高い申請書を作成できる。基幹系業務システムが保有するデータのほか、マイナンバーカードの情報を基にして申請書を作成することも可能だ。
二つ目が「総合窓口対応」機能だ。基幹系業務システムが保有するデータを集約し、窓口業務に必要な手続き対象者とその世帯員の情報を参照可能な機能だ。参照可能な情報は職員の情報参照権限に応じるため、個人情報の漏えい防止にも寄与する。
三つ目が「ライフイベント関連手続き判定」機能だ。基幹系業務システムが持つデータから、住民の転入・転出・転居・出生・死亡といったライフイベントの際に必要な関連手続きを自動リストアップする。そうすることで、複数種類の手続きをまとめて案内・受付できることに加え、住民は繰り返し来庁する必要がなくなるのだ。
窓口業務の標準化を支援
らくまどは上記のほかにも、窓口業務を支援するための「手続きナビゲーション」機能と「受付管理」機能を備えている。手続きナビゲーション機能は、手続き受付時の受付手順や確認項目をシステムがナビゲーションしてくれる。経験の浅い職員でも受付対応が可能になり、受付業務の平準化を支援する。受付管理機能は、受付した手続きの進捗状況の管理や対応履歴の共有を行える。窓口業務とバックヤード業務、庁内の連携をスムーズにすることで、業務の効率化を実現する。
また、らくまどのUIがユーザーから好評だと伊藤氏は話す。「共同開発を行った北見市役所の職員の皆さまが、実際の業務に即したUIを作成しています。そのためユーザーにとって、痒いところに手が届くUIになっています」
最後に伊藤氏は今後の展望をこう語った。「自治体向け情報システムの標準化が落ち着いた後、窓口業務支援システムの需要がさらに高まり、新たな機能やサービスも求められるでしょう。当社はサービスの開発元としてリソースを集中し、らくまどに生成AIを活用した聞き取りを効率化する機能の搭載や、らくまどのパッケージ化を推し進めていきたいですね。さらに営業および導入・保守体制を強化することで、より多くの自治体さまにらくまどを提供していきます」
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取締役
DX推進部長
伊藤 大輔 氏
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