PC-Webzine "from DIS" (2021年)
2021年07月号
大正14年からの長い歴史を誇る三保電機は通信インフラの設計・施工・保守を事業基盤に発展を続けてきた。現在は中国・山陰地方を中心に九州や東京にも拠点を置き、従来の通信事業に加えて地域のニーズに応じたソリューションも提供している。近年では製造中止後も多くの顧客が利用し続けているNEC PC-98を、これからも使い続けられるようエミュレーションソフト「eMD-1」の開発・販売にも力を入れている。
拠点の強みを生かしたビジネス展開
広島事業本部
長井十志明氏
三保電機は官公庁における通信インフラの工事を事業の主軸としているが、拠点ごとに異なる強みをそれぞれの地域で生かすことで幅広いソリューションを提供しているという特長を持つ。同社は広島市の本社をはじめ米子、福山、宮崎、東京などに拠点を置く。
同社の長井氏は「拠点ごとに地域のニーズに応じた強みを持っており、例えば米子は無線通信が強く、宮崎は官公庁や学校に強いなど、それぞれの拠点が自身の強みで地域のニーズに応える形で事業を成長させている」と話をする。
また本社ではケーブルテレビ向けの制作システムや番組送出システムも手掛けている。長井氏は「地方には多くのケーブルテレビ局がありますがシステムエンジニアが不足しており、システムの保守やコンサルティングといった需要が増えている。またシステムの老朽化も進んでおり、リプレースの商機もある」と意気込む。
さらにユニークなのが東京営業所が手掛けているNEC PC-98リプレースソリューション「eMD-1」だ。同社はNECの販売特約店として長年にわたりPC-98を販売してきた。すでにPC-98は製造中止となっているが、今もPC-98を利用し続けている顧客がいるという。
長井氏は「PC-98は製造工場で稼働する設備の制御に多く使われている。PC-98の製造・販売は終了しているが、数年前までは店頭の在庫もあり購入することができた。しかし現在ではその在庫も底をつき、利用しているPC-98が故障すると修理もできず、設備本体を更新しなければならなくなる」と指摘する。
MS-DOSをエミュレーションしてPC-98を延命
eMD-1はPC-98のOS環境であるMS-DOS(Ver.3.3C~6.2)などを最新のWindows PCでエミュレーションするソフトウェアだ。eMD-1を利用することでPC-98で動作しているソフトウェアを、最新のWindows PCで動作させることができるようになる。設備本体の更新には多額の投資が必要となるが、eMD-1で最新のWindows PCにPC-98の環境を再現できればわずかな投資に抑えられる。
eMD-1は製造業に限らずさまざまな設備の制御システムで利用されているPC-98に適用することができるが、特に需要が高いのが半導体工場だ。半導体工場では半導体の需要増により、システムを更新したくとも生産ラインを止められないからだ。
長井氏は「eMD-1は半導体工場への導入実績が豊富にある。半導体工場では需要増に対応するために全てのラインがフル稼働しており、止まることが許されない。高い信頼性が求められる現場で、eMD-1がお客さまの要求に応えて評価を得ている」とアピールする。
MS-DOSをエミュレートしてアプリケーションを動かすと聞くと、技術的に容易に感じるかもしれない。ところが設備の制御システムに接続される機器やアプリケーション、システムの役割などがそれぞれ異なり、たとえ同じ工場内の同じ設備であっても使われ方が異なるだけで、制御システムをエミュレーションするには細かなカスタマイズが必要になるという。
長井氏は「eMD-1はソフトウェアの販売ではなく、導入環境に応じたカスタマイズを含めたソリューションとして提供している。半導体工場だけでもさまざまなメーカーさまの、さまざまな設備に導入させていただいており、貴重な知見やノウハウが当社に蓄積された。その知財が設備を止めない信頼性を実現している」と胸を張る。
今後は同社独自のノウハウを導入ケースごとにカスタマイズの手順を標準化してマニュアルを作成し、eMD-1をパッケージ販売する計画だ。
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