PC-Webzine "from DIS" (2025年)
2025年08月号
業務効率化のために、大規模言語モデル(LLM)に外部知識を取り込んで、生成される回答の信頼性と安定性を高める技術「Retrieval-Augmented Generation」(RAG)が広く使われるようになってきている。しかし、日本企業が保有するデータには、図表が多く含まれているほか、文章化されていない暗黙知も多く存在している。そのため、テキストベースのRAGでは対応しきれず、回答の品質が限界に達しつつある。こうした課題を解決するのが、NDIソリューションズが提供する、動画の内容を解析できる生成AIツール「Video Questor」だ。
動画の内容を基に文章を生成
NDIソリューションズは顧客の課題に対して、業務アプリやクラウドといった幅広いソリューションを提供している企業だ。そんな同社が提供する製品の一つに、動画の内容を解析できる生成AIツール「Video Questor」がある。Video Questorの提供を開始した背景について、同社 理事 ソリューション戦略事業本部 第1ソリューション戦略部 部長 増田浩和氏はこう語る。「日本では現在、少子高齢化や労働生産性の低さといった構造的な課題が深刻化しています。多くの企業では人手不足や技術継承、人材育成といった問題に直面しており、こうした課題に対して生成AIの活用が有効な手段になり得ます。当社ではそうした生成AIの学習データとして、動画に着目しました。動画は、音声や文字だけでは伝えきれない人の動きなどの情報を含んでおり、その情報量は文字の約4~5倍に上ります。さらに、コロナ禍を経てWeb会議ツールが広く普及し、会議や研修の録画が容易になったことも追い風となりました」
Video Questorはシーンごとの映像内容を解析してテキスト化する。解析された情報は時系列で整理されるため、動画全体の構造を簡単に把握可能だ。さらにチャットで指示を出せば、動画の情報を基に要約や問い合わせの回答、文章生成などを行ってくれる。また動画のタイムコードリンクも自動生成するため、長時間の動画から必要な情報に素早くアクセスできる。翻訳も行えるため、外国人労働者のトレーニングや海外イベントの内容把握にも活用可能だ。
バックオフィス部門の負担を軽減
Video Questorの主な活用事例について、同社 ソリューション戦略事業本部 第1ソリューション戦略部 藤本恵都氏は次のように語る。「バックオフィス部門の負担軽減が挙げられます。新システムの導入説明会や社内研修の動画をVideo Questorにアップロードすれば、受講者側はチャット形式で質問し、動画から即時自動で回答を得られます。その結果、問い合わせ対応の手間が減り、また確認テストを動画から生成することが可能となるので、バックオフィスの業務負担軽減につながります。そのほかにも製造業や建設業では、作業動画を質問のできるマニュアルとして利用し、作業のコツを若手社員に伝える技術継承にも活用されています」
Video Questorは、同社の生成AIプラットフォーム「Questella」(クエステラ)上で稼働しており、Questella上の生成AIツールも利用可能だ。ChatGPTやWeb検索に特化した「Perplexity AI」など、用途に応じて複数のLLMを選択できる。
最後に増田氏は、Video Questorの展望をこう話した。「複数の動画を横断的に検索する機能などを提供予定です。機能強化を通じて、日本の構造的な課題を解決していきます」
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理事
ソリューション戦略事業本部
第1ソリューション戦略部
部長
増田 浩和 氏 -
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ソリューション戦略事業本部
第1ソリューション戦略部
藤本 恵都 氏
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