PC-Webzine "from DIS" (2020年)

PCやサーバーなどのハードの販売からネットワーク、システム構築までをトータルで手がける独立系SIer のアクトは、自治体システムの構築実績をベースに、電子投票システム「OMEGA（オメガ）」を開発している。最新の技術であるブロックチェーンを活用したOMEGAは、投票システムに大きな変革をもたらしそうだ。

独立系SIerのアクトは、官公庁や自治体、大手企業などを中心にシステム構築やハードの販売を行っている。自治体関連向けのシステム開発では、教育委員会向けの就園・就学総合システムなどを提供しており、特に選挙総合システムは、これまでに全国で約300の自治体に提供してきた。「名簿管理システムや各種投票システム、開票システム、従事者管理システムなど、選挙に関わる総合的なシステムを各自治体と二人三脚で開発してきました」とアクト 執行役員 戦略事業推進本部 本部長の小林智彦氏は振り返る。

ただし、従来までの選挙に関わる投票システムは、現在のユーザー環境では不便さが生じてしまう点もあると、アクト 営業本部 営業部の堀口 仁氏は指摘する。「スマートフォンやPCが当然のように利用されている状況で、投票場所に足を運ばないと投票できない仕組みは、若い世代を中心とした投票率の低下の要因にもなっていると考えられます。また、選挙を管理する側にとっても、紙の投票用紙を利用した従来の方法では作業の手間がかかるとともに集計ミスなども生じやすいリスクがあります」

そこで注目されているのが、スマートフォンなどを利用して投票が行える電子投票システムだ。紙を利用せずに投票が行えるため、管理者側は従来までの作業負担から解放され、人的なミスに左右されることもなくなる。投票者側は遠隔でも投票できるようになるため、選挙での投票率の向上も見込める。

ただし課題もある。「ハッキングなどによる情報改ざんの防止や個人情報の安全な管理など、セキュリティの観点で電子投票システムには越えるべきハードルがあります」

こうした中でアクトが開発を行っているのが、ブロックチェーンを活用した電子投票システム「OMEGA（オメガ）」だ。

OMEGAに利用されているブロックチェーンは分散型台帳とも言われるテクノロジーで、ネットワーク内で生じた取り引きの記録をネットワークに参加するユーザーが同一の台帳で共有することで、情報の信憑性などを担保する仕組みだ。このブロックチェーンの利用で、改ざんに強く、匿名性も確保した電子投票システムが実現すると小林氏はアピールする。「情報の匿名化で秘密投票の原則を維持しながら、電子投票のメリットを生かせるようにするのが、電子投票システムのOMEGAです」

OMEGAの提案は第1フェーズと第2フェーズに分けて考えられている。第1フェーズは投票システムのWebシステム化だ。「OMEGAの導入でクラウドを活用した電子投票システムへと移行していただき、従来のサーバー導入や管理に要されるコストの削減などを促進していきます」（堀口氏）

第2フェーズはインターネットを利用した電子投票の実現だ。現状の法律では選挙などへのインターネットを利用した電子投票の活用は難しいが、法律が整備された時点でスマートフォンやPCを利用したインターネット投票をOMEGAで実現させていく。「さまざまな自治体と実証実験を実施し、ブロックチェーンを利用した電子投票システムの社会実装を目指します」と小林氏。

こうした展望もあり、選挙での利用の前に、議会内での投票の電子化としてOMEGAを提案することが第一歩となりそうだ。「当社の強みは、約300の自治体で選挙システムを構築してきた実績にあります。選挙業務を知り尽くしているので、各自治体のニーズに合わせて機能をカスタマイズしたOMEGAの提案が可能です」（堀口氏）