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from DIS
月刊ITビジネス情報誌PC-WebzineからDIS関連情報をお届けしています。
 
-2008年8月号-
「日本市場へ本格進出したAcer」
DISをパートナーにインダイレクト戦略推進
Acerが日本市場への本格進出を開始した。
エンドユーザーへの直販は行わずにチャネル販売を徹底する同社は、日本市場における販売パートナーとしてダイワボウ情報システム(DIS)を重視、両社の協力体制の下に日本のビジネス市場を攻略していく方針を明らかにした。
 
左からDISの安永達哉専務、Acerのスティーヴ・リン・アジアパシフィック地域担当プレジデント、DIS松本紘和社長、日本エイサーのボブ・セン社長

ノートPCでは世界第2位
  Acerは、ノートPCでは世界第2位、デスクトップPCで は世界第4位、PC総合では世界第3位のPCベンダーとしてグローバル展開している。成長率については、世界のトップ5社の中でも断然の1位を誇る。品質に厳しい欧州市場での実績が高いことが特徴で、ノートPCを主力に機能、デザインともに高い評価を得ている。しかしOEMメーカーとしての歴史が長かったことや、自社ブランド展開においてもまず欧米市場に力点を置いたこともあり、日本市場においては世界市場ほど親しみのあるブランドではなかったというのが実情。

  このAcerが日本市場に対して本格参入を開始した最大の要因は「欧州、中国、オーストラリア、インドと世界各地域でAcerが主力PCメーカーとしての地位を確立した今、今後のAcerの大きな成長が見込める魅力的な市場が日本」(Acer・アジアパシフィック地域担当プレジデントのスティーヴ・リン氏)であるとの判断によるもの。「日本が厳しい市場であることは十分に承知しており、この厳しさこそが私達にとって大きなチャンスでもあると感じている。欧州市場で確立したノートPCへの評価が、日本市場でも必ずや確立すると信じている」(スティーブ・リン氏)と、日本市場にフィットする商品力に自信を見せている。
 
独自ビジネスモデルを展開
  1976年に台湾で創業したAcerは、OEMを主力としたPCビジネスで世界に知られる急成長を遂げ、1987年に「Acer」の名で自社ブランド展開を開始した。2002年からOEMビジネスよりも自社ブランドビジネスに力点を移行する事業再構築に着手し、再構築がほぼ完了した2005年には世界PC第5位のグローバル企業となり、2007年には総売上高約1兆5千億円という世界の主力PCメーカーへと成長した。ちなみにAcerとは、ラテン語で大きな木を指し、頑丈、強固、長寿などの意味も含まれる。

  Acerの事業展開の最大の特徴は、従業員1人当たり売上金額の大きさだ。世界50カ国でビジネスを展開しながら、総社員数は現在約5,600人。この人員で年商140.6億US$をカバーしている。年商が約1.7倍の某競合メーカーが、従業員数にして約3万人つまり約6倍であるのに比較すると、従業員1人当たりの生産効率の違いは明らかで、同じグローバルPCメーカーの中でも、Acerが推進するビジネスモデルの独自性は明らかといえる。

  このように独自のビジネスモデル展開によって急成長を遂げるAcerは、PCの本場米国でも注目を集めている。「Acerの出現はPC業界の歴史に最も多大な転換をもたらした」(Wall Street Journal,2007年4月)との評価にも見られるように、従来のスタイルを破る高効率なビジネス展開には世界の関心が高まっている。

  Acer成功の要因について、台湾メーカーとしてスタート時に中国の豊かなリソースを有効活用できたことなどが指摘されているが、既存の北米大手メーカーを相手にしての急成長の要因は「ダイレクト販売という最近の流通の流れに迎合することなく、あくまでチャネル販売を徹底したこと」にあると日本エイサーのボブ・セン社長は指摘する。「チャネル販売を徹底するからこそ、世界各地それぞれの状況に迅速・柔軟に対応できる。この機動性の高さについては、それぞれの地域で活躍する販売パートナーの協業体制によるところが極めて大きいので、日本のトップITディストリビューターであるDIS様との協業にも大きな期待を抱いている」と語る。
 
役割を補完し合えるメーカー
  日本におけるAcerの主力販売パートナーとなったDISも、チャネル販売を徹底するAcerの姿勢を高く評価しており、メーカーとディストリビューターがそれぞれ得意とする役割を分担するという協業体制の確立に向けて積極的な動きを開始した。

   「Acer様と協業に向けて本格的な交渉を開始した昨年半ば、全世界レベルでディストリビューターとの取引を徹底している基本姿勢にまず共感を覚えた。1兆5千億円の年商を全世界5,600人の従業員が支えているということは、徹底したビジネスの効率化とともに、各地域のディストリビューターとの協力関係を重視しているということに他ならない。つまりさまざまな面において私達ディストリビューターと補完し合うことのできるメーカーということで、従来のPCメーカーとは一味違った魅力を感じた」というのが交渉に当たったDISの安永達哉専務の感想だ。

  両社にとって大いに魅力のある協業であることから、話は一気にまとまった。AcerとDISとの協業によって、最新のテクノロジーをハイコストパフォーマンスな形でいち早く提供するメーカーと、全国拠点展開による顧客密着にプラスした創意工夫を販売の現場に投入して実績を上げるディストリビューターとの補完体制によって「メーカーとディストリビューターという従来の役割に縛られることなく、両社が推進するビジネス全体としての効率アップと品質アップを実現する」(安永専務)という新たなビジネスモデルがスタートした。

   商品を使いたいユーザーに的確に提供し、これを有効活用するための支援を行い、さらにその最終段階までを見届けるという商品のライフサイクルすべてに対して、メーカーと補完し合いながら責任を果たしていく―これがDISが考えるディストリビューターの役割だといえる。

  最近のIT業界における大きな課題としてクローズアップされるグリーンITについても、メーカーにすべてを任すのではなく、「お客様により近いディストリビューターだからこそ、地球環境保護に向けて果たすべき役割はより大きい」(DISの松本紘和社長)との考え方が基本。7月2日には、グリーンITを強力に推進するディストリビューターとしての意気込みを大手全国紙5紙で一斉にアピールするなど、一般消費者への告知においても積極的な動きを見せている。
 
 
グリーンITを基軸に
  エコロジー対策は、地球人として当然の責務であるとともに、今後のビジネスの重要なポイントでもあるというのがDISの考え方だ。Acerのパソコンについても「コストパフォーマンスが高いというアピールだけでなく、品質とエコロジー対応に厳しい欧州市場で高く評価されているという事実を正確に伝えることが、日本市場でのAcerの普及につながる」(松本社長)との意見を述べる。

  この意見に対してAcerも「品質に厳しい日本市場ならではの貴重なアドバイスと感じている。欧州市場での高い評価は当社としても大きな自信になったが、この評価を日本のユーザーに対しても正確に伝えていくよう、さらに努力したい」(ボブ・セン社長)と応えるなど、両社の足並みは揃っている。

  メーカーとディストリビューターの関係は、企業によっても時代によっても変化し、いずれがベストかは一概に言えるものではない。しかし今回のAcerとDISの協業については、Acerにとっては日本市場攻略の最大のパートナーとしてDISが位置づけられ、DISにとっては日本のPC市場を活性化するという意味でも販売のモチベーションを高めるという意味でもAcerに寄せる期待は大きいということで、両社にとってベストの協業と言える。

  DISはマルチベンダーとしてさまざまなメーカーの商品を取り扱っている。Acerについてもその中のひとつのメーカーであるとの位置付けは同じだが、「PC専門ディストリビューターとしてお互いが補完し合いながらより力を発揮することが期待できるメーカー」であることが、今回の協業の大きな特徴となっている。

  DISとの協業が早くも効果を発揮して、今年第1四半期の日本市場におけるAcerのシェアは2.3%と、はじめてベスト10位にランク入りした。今年は日本市場での売上金額・シェアともに倍増を期待しており、今後しばらくは「年率200%の成長を目指す」(ボブ・セン社長)方針だ。
 
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