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DIS School Innovation Project 教育研究所所長インタビュー
長崎県 長崎市
-2015年10月号-
長崎県長崎市
市民や行政の理解と期待に支えられ、学校現場への加速度的な普及に取り組む長崎市のICT教育
独自の教員研修でICT教育を推進する長崎市教育研究所所長 増山順子氏にうかがいました。
長崎市教育研究所
所長 
増山 順子 氏

昭和32年生まれ。熊本女子大学を卒業後、昭和55年度より琴海町立琴海中学校で中学校国語科教員として教員生活をスタートさせる。その後3校で中学校教諭として15年間勤務、長崎市教育委員会指導主事として4年間勤務、中学校教頭として4年間の勤務を経て、長崎市立黒崎中学校・長崎市立淵中学校長を務め、平成26年度より現職。
竹原市DATA
  【都道府県】長崎県
  【人口/世帯数】435,298人/209,622世帯(平成27年7月現在)
  【小・中学校数】小学校73校、中学校39校
  【児童・生徒数】児童20,088名、生徒9,823名(平成27年5月現在)
  【歴史】古くから外国への玄関口として発展し、独特の文化と景観を育んできた長崎市。2015年には、旧グラバー住宅、端島(通称:軍艦島)炭坑をはじめとする長崎市内にある8つの史跡が、「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の構成資産として世界文化遺産に登録されました。
 
ICT活用のねらいを明確に 教員の創造性を引き出す
―平成17年1月の町村合併により2つの離島が加わった長崎市の教育振興基本計画の基本理念は、「体験や人とのかかわりの中で、豊かな心を育み、生涯にわたって自分らしく生き抜く長崎人の育成」です。その実現に向けて4つの個別施策に取り組んでおられますが、その第一の施策「確かな学力の向上」“子どもが自ら考え、表現できる確かな学力を身につける” 取組みについてとICT教育推進の状況をお聞かせください。
長崎市は小学校73校、中学校39校という中核都市ですが、教育への取組みについての市政や学校現場、そして保護者の思いは「自分らしく生き抜く長崎人の育成」に向けてしっかりつながっていると言えます。

ICT教育推進については、教育行政側の現状確認と推進への期待発言をきっかけに、推進・普及まで2年という短期間で実現しようとしています。今年度(平成27年)、長崎市内のすべての小学校に一学級分を目安とした40台前後のタブレットPCが導入される予定です。これは、昨年26年度の小学校10校、中学2校での実践研究の成果によるもので、ICT教育は“児童の意欲の向上”と“教員の授業への創意工夫” の双方に寄与するとの評価結果によるものです。

具体的な取組みとしては、現場教員の抵抗感と混乱を避けるためにICT教育推進のねらいを“学力向上” よりも、“情報活用能力の育成” に絞ったことが、“児童の意欲の向上”と“教員の授業への創意工夫” につながった大きな要因といえるでしょう。そのひとつの事例として、タブレットPCの保管場所と保管方法が挙げられます。小学校では、パソコン教室の機器入れ替え時の導入を想定していましたので、当初タブレットPCはパソコン教室で保管していましたが、多くの学校では職員室の一角に10台ずつカゴにいれて保管する形に運用変更されました。タブレットPCが身近にあることで、先生方が常に触れ、授業での活用を教え合う機会が日常化します。また、10台入りのタブレットPCカゴでの保管スタイルは、持ち運びが容易であることから、複数の学年や、複数のクラス同時の活用がしやすくなり、さらには、運動場での体育や理科室での授業など、普通教室以外での協働的な学習活動により、児童の思考力育成につなげています。

また、長崎市には二つの離島があることから“情報活用能力の育成” を身近なものにする必要があります。TV会議システムを活用した島の学校と本島の学校を結んでの遠隔授業やタブレットPCを活用した情報交流授業など、距離や環境を超えた学びの実現には、ICT機器の導入が不可欠であることを、同じ長崎市に学ぶ環境であるという身近な日常で実感・体感することができます。

タブレットPCを活用したこのような協動的な学習活動により、児童の主体的な学習への意欲を喚起し、思考力の向上をめざし、一斉授業では、電子黒板などを活用した「わかる授業」の実践により、学力向上につなげたいと考えています。
 
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